【戦争広告代理店】があまりにエキサイティングすぎたものだから、同じ著者の別の本も、図書館で「お借り上げ」。
感想:★★★★☆
2001年3月、タリバンにより破壊されたアフガニスタンのバーミヤン遺跡。その破壊までの過程、タリバンと国連や各国NPOなどの動きを追ったドキュメンタリー。そして、タリバンのアフガニスタンへの台頭と、いかにオサマ・ビンラディンが、アルカイダがタリバンに寄生・侵食していったかを描いたもの。
相変わらず、高木氏の取材力・構成力・筆力は感服せざるをえない。日本人になじみない地名、人名、宗教観が入り乱れて決して読みやすいものではないのに、やはりぐいぐいと引き込まれ3日で読了。
だけど、高木氏の著書だから読みたかっただけでバーミヤン遺跡にはそこまで関心がないのが正直なところ。そしてこのバーミヤン遺跡への無関心は世界の総意で、だからこそ切ない最期を遂げたんだろう。
とはいえ、一時の狂信的な宗教組織の宗教観のせいで(イスラム教全体を否定するものではありません)、1500年も前の偉大な足跡が吹き飛ばされるのは、なんともやりきれないね。アフガニスタン情勢にもバーミヤン遺跡にもまったく無関心だった私が言う資格はないけれど。
興味深かったのは、タリバンとアルカイダの関係がわかったこと。これまで日本のニュースで上がってくるのを受身で得るだけで、一度も積極的に情報収集したことがなかった。だから、9.11後になぜアメリカがアルカイダではなくアフガニスタン(タリバン)を攻撃するのか理解できなかったんだけど。
元々は別組織だったんだけど、いつの間にか(というか実に周到に)アルカイダがタリバンの中枢に食い込んでたのね。納得。いやこう書くとあまりに軽いけど、本書では、その過程、ビンラディンのしたたかさ、計算高さ、勝負強さが丁寧に描かれてるのでご一読を。
もうひとつ興味深かったのは、米政府のしたたかさ(P144)。表層的なニュースしか知らなかった私は、当時「1か0のデジタル志向のアメリカが強気に他国を攻撃してる」って感じだったんだけど。実際は、裏でも色々やってたのね。表では、かなり強気にタリバン政府に最後通牒を突きつけつつ、裏ではNGO関係者を使って、狂信的なタリバンの中で誰なら欧米側の人間と交渉できる(理性的・戦略的に話し合える)のか、将来的に「使える」指導者として育成できそうなのは誰かの探りを入れる。すごいー。
中国政府の動きも面白かった。タリバン最高指導者のオマルは、元々内戦で混乱していた国を統一・解放しようとしてタリバンを組織し、いつの間にか狂信的な考えになっていったんだけど。そんな時期にオマルと面会した中国使節団は、あえてらくだの像を友好のしるしとして渡したんだそうな(P260)。
「偶像」を嫌うオマルは明らかに怒気に満ちた顔になり、像をすぐには受け取らなかったんだけど、通訳に「受け取らないと外交上失礼」と言われ、仕方なく受け取ったと。
で、この贈り物はわざとらしいのね。中国は、オマルの狂信性がどれほどまでいったのか、ビジネスパートナーとしてまだ成立するのかを見るために、わざとこんな挑発的な贈り物をしたと。中国、強気。。
米国、中国、すごいね。今の日本には、こんだけ複合的なアプローチをやれる戦略家も人材も、それを強気で実行できる国力もないよね。。。
と熱く語りつつも、前著にくらべると、インパクトは若干弱い。それは、前著がジム・ハーフを筆頭に、問題の中心人物やその側近にインタビューできているのに対し、今回は資料が不足している点。まあそれは、元々情報開示なんて概念がないタリバン、またタリバン政府転覆後は米政府が資料を根こそぎ奪って開示しないこと、当事者であるタリバン関係者の多くは米刑務所もしくは行方不明って状態じゃ仕方ないんだけど。むしろそんな中よくここまで調べたなというくらい。
いやはや、高木さんすごいー。興味のある人はぜひ。
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